第31回(令和3年度)日本クラシック音楽コンクールのフルート部門の感想、そして指導者としての目線から感じたことを備忘録として残します。

今回私が聞けたのは神奈川予選(小学生、中学生)、神奈川本選(小・中・高校生)、全国大会大会(小学生)の3部門のみ。
しかも初戦からじっくり聴けたのが小学生部門のみなので、そちらに多少偏ったレポートとなりますがご容赦ください。

小学生、中学生、高校生、どの部門もとてもハイレベルでした。

今年の中学生、高校生の部の入賞者は音楽家の登竜門であり、学生コンクールとしては国内最高レベルの全日本学生音楽コンクールの入賞者と多くが被ったことが物語っているかと思います。

小学生にしても全国に残った子達は楽器を始めて数年とは思えない立派な音、器用に回る指を持ち合わせており、まぁビックリしました。

それにしても一番素敵だと思ったのは、みんな演奏する喜びに溢れていたこと。これは客席の私達にはとても清々しく魅力的に映りました。
あぁ、いいなぁ~と。
中高生ともなると、そこにかなり集中度の高い演奏をする方も出てきて聞き応えがありました。

そんな中で、考えさせられたこと。

①選曲の難しさ

自由曲制のコンクールで何を吹くか。
これは指導者、相当悩んだかと思います。
点が取れる曲、そして何よりその子の良さが発揮できる曲…逆に苦手な部分がある程度カバーできたら…となると簡単ではありません。
ちょうど学生音コンの時期と重なることもあり、中高生はそのまま課題曲を持ってきた方も多かったですが。

特に小学生に関して言うと、歴史的にはフルートという楽器はまだまだ早期教育が進んでいないのです。
近年U字管は開発されているものの、管の太さもキーの間隔も大人のものと同じ。
補助キーのついたものもありますが、まぁ持ちにくいったらありゃしない。
多少なりとも身体に負担がかかることは否定できないでしょう。

そんな中、子供にも理解が出来るシンプルな構造、美しいメロディ、小さな手にも無理のないテクニックを持ち合わせた華やかな曲なんて、そう多く生まれてないのですよね。
この点、ピアノとバイオリンの世界は圧倒的にレパートリーに恵まれていますね。子供のために書かれた曲は時代を問わず初歩から難しいものまで山のようにあるでしょう?

その結果、点を取りに行く、という目的上、ちょっと背伸びをした選曲になってしまった、という傾向が多少なりともあったように思います。
これが音楽的にも理解を深め、テクニックも完璧に吹けたらそれは素晴らしいのですが、なかなか難しいところかもしれないなぁ。

が!!おそらく、そういう時代が近いうちにやってくるでしょうね。
そのくらい近年の若手のレベルは急上昇していると思います。

いずれにしても、これから若年層がどんどん増え、発展する事を踏まえて、そこら辺をカバーした隠れた名曲をいかに探して勉強しておくか、指導者としては課題だなぁと思いました。

余談ですが、私が入賞した1995年度の第5回大会で小学生部門1位、グランプリを獲得したのは当時小学校3年生だった、現在フィンランド放送響首席の小山裕機さん。(後に神戸国際で日本人初の優勝。)
彼がU字管でイベールのコンチェルト第3楽章を吹いて会場を大いに沸かせたのを思い出します。
私は出番を控えた身で聴いていませんでしたが、客席で聴いていた母が私の演奏なんかそっちのけで大興奮していたのを覚えています。
そういう歴史を変える大物もいます。YouTubeで見れますよ!

②楽譜を読む

みんなホントに指は良く回るし、音も立派。
フルートのパートは良く読んでさらったのでしょうが、ピアノとのアンサンブルで崩れが見られることも多かったように思います。
というか、ピアノが何をしているか良くわかっていない??聞いてない?と感じることも。

スコアを読むと共に、先生やお家の方が、レッスンや練習の際にベースや和音だけでも何度も弾いてあげると良いかと。
ピアニストと沢山合わせられたら良いんでしょうけど、なかなかそんな機会も多くないですよね。

どこでどんな風に和音が変わるのか、ピアノに生まれてるメロディにフルートがどう重なるのか。
知ると音楽の流れも変わります。

頭で理解してても、実際自分が吹くことに一生懸命になるとそれが聴こえてこない、ということも存分にあるので、慣れの面でも是非沢山付き合ってあげて欲しいところです。
楽器が出来ない親御さんなら、一緒に歌ってみるのも良いですよね。
私は娘の練習を聴きながら料理をし、伴奏歌いまくってます(笑)

③チューニング

あぁ、みんな何で控え室でチューナー使わないのかしら。
ステージの上では最終確認、楽屋で近似値まで合わせておけばこんなにおかしくなることないのに…と何度も思いました。
(控え室で「チューナー使う?悪いこと言わないから使っとけ!」と何度もみんなに声をかけたくなった私…)

しかも、ピッチが低い人の多いこと!
多少高いのはあまり気にならないけど、低いのは相当気になります。
フォルテを吹いてようやく一瞬合った…という感じの演奏が驚くほど多くありました。
「上がれ!上がれ!」と何度心で念じたことか。
普段吹奏楽かなにかで、高めを指摘されてるのかな??
(逆にチューニング全く合っていないのに、演奏し出したら合ってる、というミラクルな人もいましたが。笑)

ステージ上で冷静にチューニングできれば全くOKですが、たかが数分の作業だし、やっといて損はないかな?と思いました。

④フルート以外の音楽を聴いてね。

フルートやってるとフルートばっかり聴いちゃいますが。
オペラ、歌もの、弦楽器やらピアノ、そこら辺もっと聴けたらよいなぁ、と思います。むしろそっちだけでも良いくらい。
声色、ブレスの取り方(ブレスに表情があることが良く分かる!)、ヴィブラート、アーティキュレーションの奏法…
本当に色々気付かさせるし、アイデアももらえますね。

今回は半年間を通して、素晴らしかった所も、これからの課題も、私が沢山学ばせてもらったなぁという感じです。
勉強している若手の方、同じ指導者としてコンクールへ送り出す方、親御さんの参考になれば幸いです。

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